比較文明・環流文明研究会のご案内

染谷 臣道  

 ヨーロッパで興隆した近代文明は、時とともに発達し、今や全世界を覆うに至っています。その発達ぶりには、過去の諸文明と比較にならないほどの、非常に大きな特徴がありました。まずその規模の大きさです。地球規模なのです。さらに科学、技術、芸術などの領域でみごとな成果を挙げたことです。その成果は産業や社会の発達に大きく貢献し、地球は人類の所有物となった感があります。卓越した科学技術力そして軍事力をフルに発揮して世界の多大な人的物的エネルギーを乱取し、文明を構築してきたのです。それは激越で凄まじいものでした。

現代文明の光と影
 かつて地球上に栄えたどの文明と同じく、近代文明もまた輝かしく光る面と影の暗い面がありました。私たちは文明の輝かしい面に目を奪われがちですが、影も見なければ文明というものを正確には理解できません。とりわけ近代文明はその規模の大きさからも判るように、人類にもたらした恵み-といっても人類の一部にですが-は確かに大きかったのですが、反対に大罪も犯してきました。21世紀を迎えた今、その罪をつぐなう罰がますます大きく私たちに迫ってきています。それが後世への大きなツケとなることは明らかです。

環流文明の提案
 過剰ともいえるほどの膨大なエネルギーを使う文明でしたので当然といえば当然でした。エネルギーを求めてこの文明は、世界の諸民族から富を奪い取り、あちこちの地下資源を濫掘し、挙句の果てに国際社会を混乱させ、環境を破壊してきた収奪的な文明でした。それは今もとどまることを知りません。それを目の当たりにしている私たちは、この暴力的な文明と決別し、全ての人間を含む自然が等しく恩恵に与れるような、平和な世界を作れるような、新たな文明を構築する時を迎えているのではないでしょうか。そういう文明を構築するために私たちは「環流文明」を提案します。

環流こそが自然の法則
 地球内部はもちろんそれを覆う自然もまたすべてが還流する世界です。ただ文明のみがそうした環流の「法則」を無視し、中心に力を集中させて環流を止める装置を作って作動してきました。それが文明というもののようです。明らかに不自然でした。確かに、文明は多くの人々に恩恵をもたらしました。ただ、恩恵に与ることができたのは文明の中心にいた人たちであり、周辺や外に置かれた人々にとっては、逆に、災いでした。日本人の多くは、一時不幸なときもありましたが、世界の諸民族国民と比較すると、どちらかと言えば、文明の恩恵を享受するほうにいました。恩恵に浴した人々は、ややもすると、不幸な人々を理解できませんが、文明の影に追いやられた民族や国民のことを忘れてはならないでしょう。何の罪もない大自然もまた文明の影に追いやられてきたことを忘れてはなりません。
 文明というものは、本質的に、自然を収奪し、社会を収奪しなければ成り立たない人工物でした。自然環境を損ない、社会を損なうのが文明でした。私たちが享受している繁栄の裏をのぞくと、世界のあちこちに近代文明が傷つけてきた傷跡をたくさん見つけることができます。繁栄を享受してきた私たちはその傷を治さなければなりません。そうしなげればこれからの世界は成り立ちません。

自然の、自然による、自然のための文明へ
 自然も人々も全て文明の恩恵に与れるような、そういう文明を築かなければならないと思います。環流文明とは人類を含む自然の全てが参加し、恵みに与れるような、自然な文明です。人間を含む自然が土台です。私たちは「自然の、自然による、自然のための文明」の構築に向けて考え、行動したいと思っています。


* タイトルバックについて
 このサイトのタイトルバックの写真は、インドネシアのボロブドゥールです。世界最大の仏教寺院で、今から1200年前に建造されました。実は、日本の仏教と大きなかかわりがあることが判ってきましたので、日本人には縁が深い寺院です。
 この寺院の中央にそびえる大ストゥーパは人間のこの世の終着駅であり、大自然に戻っていく出発駅を表わしていると解釈できます。人間は死んだら空気と水と大地になる。他の生物と何も変わりません。そして空気と水と大地に行きわたっている諸元素が集まって再びこの世に現れる。もちろん人間として現れるのか、象として現れるのか、蝿として現れるのか、それともしばらく無機物のままなのか、は判りませんが。
 ボロブドゥールのような大建築を作り上げる特異な生き物が人間です。他の生物ではできないのですから人間は素晴らしい生き物といえます。しかしだからといって増長してはいけません。地球を我がものにしてはいけません。地球は人間のためだけではないからです。
 ボロブドゥールの建造あたりで止めておけばよかったのに、その何百万倍も大きい建造物を作ってしまったところに問題がありました。その結果、今日の世界をますます緊張させています。地下資源も限界まで掘り尽くそうとしています。CO2も取り返しがつかないほどにまき散らしてしまいました。環境をますます悪化させています。
 今、人類は自分のしてきたことの償いを迫られています。その償いをしないことには済まないことは自明です。将来の地球のために、私たちはまず文明の誤りを自覚し、それを補正することから始めなければならないと思います。