2011/08/07 6:04 に Jun Inutsuka が投稿
産業経済政治と文化価値モデルによる還流文明の可能性についての一考察
東洋大学国際地域学部教授 池田誠 「日常生活において利己的であるのは容易である。しかし利己心を一つの理想として弁護するのは、それほど易しいことではない。」(モンゴメ リー・ワット著、『ムハンマド』p.82) 現代文明は、利己心を一つの理想として構築されているように思われます。その源泉をマキャベリやA.スミス、ベンサムやカルバンなど西欧発の近代文明に求めることは可能でしょう。しかし、近代以前の社会が利己心を抑制した理想的な社会であったと考えることには無理があると思われます。 現代文明が直面する地球規模の問題群(注)、例えば、貧困や人権、食糧、資源、平和、環境などの問題を克服する社会(これを私流の環流文明と位置づけている)が多様な主体から創発する可能性を検討しています。多様な主体(マルチエージェント)には、個人、家族、集団・組織としての市民活動、企業、団体、国家、国際機関などです。これらの主体による自発的な行動の複雑な相互作用の結果として、環流文明が創発(別の言葉では自己組織化)してくるようすをシミュレーション模擬実験)で表わすことができるものと考えています。 シミュレーションはまだ部分的なものに留まっていますが、その結果は多様であり、社会システムの崩壊や破滅に至るケースや縮小均衡に至るケースなど様々です。しかし、モデルを検討する過程で得られる知見も様々であり、環流文明の可能性や今後の比較文明研究の一助になればと考えておりま す。発表の機会を頂き皆さまからのご意見やご指摘を楽しみにしております。 注:主としてJ.W.フォレスター著、小玉陽一訳『ワールド・ダイナミックス』日本経営出版会、1972年から始まるメドウズらの『成長の限界』 ダイヤモンド社(1972、1992、2002)を念頭に置いています。 注2:マルチエージェントについてはエプスタインとアステルの『人工社会』、山影進著『人工社会構築指南』などを参考にしています。
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