報告者: 金子 晋右(かねこ しんすけ) 報告要旨: この度、我が国の新首相に就任した野田佳彦氏は、増税派議員の筆頭とも呼べる人物である。先日の民主党代表選では、並み居る増税反対派の候補者らを破り、当選した。加えて、最近の大手新聞の世論調査によると、復興増税に賛成する国民も半数前後にのぼる。復興増税に対する賛成が半数を上回った調査をいくつか挙げると、日本経済新聞社とテレビ東京が実施した世論調査(7月29~31日)では59%、読売新聞による世論調査(8月5~7日)では52%である。 だが、既に多くの識者から指摘されているように、現下の円高デフレ大不況の最中に大衆増税を行えば、さらに景気が悪化するのは自明である。 ではなぜ、経済学的に明らかに誤った政策が、多くの国民や国会議員から支持されるのか。その背景には、何かをなすためには、その分、犠牲を払わなければならないという、ゼロサム的世界観がある。つまり多くの国民は、震災被災者を救うためには、自分達が身を切り苦痛に耐えねばならない、と思い込んでいるのである。 そうした自己犠牲的葉隠れ的精神は、一見、尊い精神のようにも見える。しかしながら、現実の経済は、ゼロサム的世界ではない。プラスサム的世界である。経済学的には明確に誤りなのである。ゆえに、多くの人々に犠牲を強いれば強いるほど、経済は悪化し、震災復興は遅延し、日本は衰退していく。本報告では、ゼロサム的世界観に基づく経済財政政策が、いかに日本経済を悪化させるかについて解説した上で、真に有効なプラスサム的経済政策による日本再生策を提示する。 |