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木下さんとのやりとり

2011/10/26 17:23 に 染谷臣道 が投稿

染谷からの補足

先日の議論は先進国にとっては重要な問題であっても途上国の人々にとってはそれどころではない、という指摘はその通りです。

しかし私たちが議論していることは、直線的に進むという「発展主義」的文明がもたらしている地球的規模の問題です。ユダヤ・キリスト教的歴史観が根底にあります。その歴史観には終末がありますね。しかもその終末は信じる者、善行を積んだ者だけが救われるというものですね。

しかし人類の歴史がそれに沿う必要はないですね。それから自由になって別の歴史観、とくに虐げられてきた人々(途上国の人々だけではありませんが)も救われるような歴史観を構築する必要があるのではないかと思います。どうでしょうか?(10月25日)

 

木下さんからの返答

「収奪文明」が現在も存在し続け、新たに台頭し、世界各地の国で収奪し続けていることは、アジア、中南米やアフリカなどの国々をめぐった際に、実際に目の当たりにし、どうにか解消できないものかと現地の人々と話をするたびに考えてきました。

 

そして、それらの国々には援助や資本投下があり、物質的に豊かになりつつあるように見える部分もあり、それがその地で暮らす人々にとって憧れにもなっている面もあるように思います。

 

また、「発展主義」的文明については、悪い面といい面を持ち合わせているように思います。悪い面は、すでに経済的に豊かな国ですら、将来もさらに発展し続けなければいけないという焦りとなり、国力の維持と増大をめざすため収奪の方向に動かざるを得ないという点にあるかとおもいます。しかし、その反面で、人々に将来はよくなるかもしれないという希望という幻想も与えている面もあるかと思います。

 

この「発展主義」的文明観は直線的に進むユダヤ・キリスト教的歴史観からだけなるのではなく、人間がそもそも持っている将来への期待のようなものからも作り出され、受容されたのではないかと思います。そのため、日本では終末に向かうという観念もなく、ただ漠然と経済は発展し続けるものだと思い続けているように思われます。

 

 

将来的には、収奪文明から脱することは当然としながらも、現状の世界をつなぐ経済システムは機能させつつ、ゆっくりでも経済的に発展できるような道はないものかと思います。そして、実現するにはまだまだ時間がかかると思いますが、過去だけでなく現在も虐げられている人々が救われる社会、歴史観を構築するということに賛同いたします。(10月25日)
 
染谷の回答

私がまだ中学生の頃だったと思うけど、ever onward!という言葉を聞いて「いい言葉だな」と思ったものでした。この言葉は現代文明の性格をよく表わしていると思います。しかし、古今東西の文明でこういう言葉が使われていたでしょうか。多分、使われたことはないでしょう。

 

従って「人間がそもそも持っている将来への期待」というのも疑問ですね。昔の人々は「常に前へ、将来に向かって」といった考え方を持っていたかどうか。確かに、親が子供の成長を願い、やがて社会に貢献できる大人になってほしいという願いはあったでしょう。しかしそれは「常に前へ」という進歩主義からではなかったと思います。親のようになることを期待する考え方がその裏にあったと思います。ですから親を越える、親たちが作った社会を越える社会を作るという考えがあったとは思えません。

 

そうした社会は、私たちの価値観から見れば「停滞的」に見えます。そこには「進歩」や「発展」がない、と見え、否定されますね。しかしもしそういう社会の人たちから見れば、私たちは「何でそんなに前へ前へと進もうとするの?落ち着いて周りの自然を味わい、人生を楽しむなんてできないんじゃない?疲れない?今生きられるならそれで十分とは考えないの?何でもっともっとというの?」と訊かれるでしょう。

 

「進歩」「発展」「成長」を良しとする価値観は近代文明がもっている価値観でしょう。それが今や全世界の人類を捉えています。今の日本人は(といっても大都会の人です。田舎に行くとそうでないことが判ります)いつの間にか、エスカレーターを歩くようになってしまいました。そのため、(関東の場合)右半分を開けるので左側は長蛇の列を作っていますね。インドネシアの人から見れば実に奇妙な風景に見えるでしょう(私はインドネシアに長く住んでいましたのでしばしばインドネシアと日本を比較します)。Ever onwardの極みですね。

 

もちろんそうした文明にも良さがあります。しかし悪弊も考えなければならないですね。その悪弊がますます大きくなっているのではないか、そのために人々は苦しんでいるのではないかと思います。現代文明は(途上国だけでなく)先進国の人々をもたくさん苦しめています。先進国が抱える問題の一つに急増する精神疾患がありますが、これも文明のなせる業といわざるを得ません。(10月26日)

 

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